〔紫風〕第107号

投稿者: | 2018年5月28日

梅雨の足音が聞こえる。うっとうしい梅雨の晴れ間くらいは、楽しく過ごしたいものだ。北原白秋は「梅雨の晴れ間」の題で詩を書いている。梅雨で水浸しの舞台。役者もお客も総動員で水かきをする詩だが、一節に〈廻せ 廻せ 水ぐるま/梅雨の晴れ間の一日を/せめて楽しく浮かれよと〉(北原白秋『思ひ出』)▼晴れ間の一日をコミカルに表現した詩だが、コミック業界に晴れ間は見えただろうか。4月23日、NTTグループは漫画などを作者に無断でインターネットに掲載する「海賊版サイト」への接続をブロッキングすると発表した。指定された3サイトによる推定被害額は4千億円に上る▼ブロッキングの成果か、3サイトのうちの一つ「漫画村」は現在アクセス不能になっている。運営側のみが操作できるサーバーにもつながらないことから、運営自らが閉鎖したと見られている▼「漫画村」を検索窓に打ち込むと、「漫画村 代わり」の予測変換が提案された。人は一度「ただ読み」の味を占めると戻れなくなるらしい。海賊版サイトは三つにとどまらない。出版

各社も、白秋の詩のように「せめて楽しく浮かれよと」はまだまだいかないようだ▼白秋に「芥子の葉」という詩がある。〈芥子は芥子ゆえ香もさびし/人が泣かうと 泣くまいと/なんのその葉が知るものぞ〉(北原白秋『雪と花火』)芥子はアヘンの材料だ。アヘンにも似た「ただ読み」でどれだけの漫画家が泣かされただろう。晴れ間の一日と言わず、梅雨明けになればいいのに。

【細田純也】