20年の学生生活を送ったアパレル産業史家 経済学者 岩本真一(47)

投稿者: | 2018年5月28日

「働きたくない」

近代日本では、繊維や織物の研究が盛んに行われた一方、衣服の製造にまつわる研究は見過ごされてきた。本学で経済学部の教壇に立ちながら、アパレル産業史に空いた「穴」を埋める著作をまとめて5月、出稿した。

 

博士号を取得するまでに留年を8回繰り返した。学部の入学式の朝、会場に向かう満員電車の中で酸欠を引き起こしたのがきっかけだった。「毎朝こんな苦労をするぐらいなら、俺は大学に行きたくない。働きたくもない!」休学も挟み、学生生活は20年に及んだ。

毎日、古本屋めぐりと読書とアルバイトに明け暮れ、学部3年間で取得した単位数は「2」。8年が過ぎても卒業できず、不足分のために通信制の大学に通った。

大学の講義は手を抜いたが、文章を書くことは好きだった。

大学院に入ると、研究の傍らでウェブサイト「モードの世紀」を開設。古本で培った豊富な知識を武器に、ファッションの専門用語を解説した。最盛期には、2年間で1千万円の広告収入を得たこともあった。その後、個人ブログの乱立を受けて収益は大幅に悪化したものの、喫茶店の紹介や学生との交流など、記事の幅を広げながら現在も更新を続けている。

博士号を取得した後は関西圏の大学で教員職を転々とし、おととし本学の嘱託講師に着任。「計画性のない人生を歩んできた」が、今はアパレル産業の歴史で世界一の研究者を目指して執筆に取り組む。「死んだときに誰かが、『岩本著作集』を10巻ぐらいでまとめてくれる、そんな学者になりたい」   【銘苅拓也】