ベイスターズ、あがき続けた男たち 暗黒時代、プロの意地光る〔書評〕

投稿者: | 2018年1月27日

書店に赴くと、個人や企業の成功体験をまとめた本が目に留まる。それほど世間の注目も高いということだろう。だが、本書はそれらの趣旨とは全く異なる。なぜなら、プロ野球で最も敗戦を積み重ねた横浜ベイスターズの歴史なのだから。

本書は、弱小球団のベイスターズが日本一を果たした1998年から始まる。圧倒的な打線と盤石な投手陣を擁し、横浜の街は歓喜に包まれた。なによりも、優勝を果たした選手は若く、誰もが黄金時代の幕開けを予感した。

だが、予想とは裏腹に、4年後には最下位に転落。その後の10年で8回の最下位を経験する歴史上類をみない「暗黒時代」に突入することになる。

なんとか状況を変えようと、選手・監督・コーチなど、関係者はそれぞれの立場で改革を叫ぶ。しかし、球団にはびこる「責任逃れ」志向がそれを阻み、ついには横浜からの球団消滅までも現実味を帯びるようになる。

本書では「プロ」の厳しい世界を垣間見ることができる。どんなに素晴らしい策を講じたとしても、即効性がなければ「結果重視」の現場では通用しない。チームの中では、常に現状を変えようとする人たちがいた。しかし「勝ちにつながらない」という残酷な現実の前に屈し、チームを追われることになる。

4522敗の記憶 ホエールズ&ベイスターズ涙の球団史

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崩壊していく組織において、何ができるか。最弱と言われたチームの関係者たちの中にも、「プロ」としての信念はあり続けた。解雇寸前の2軍選手は、それでもチームの将来を見据え、努力する姿を後輩に見せることで。球団売却という「負け戦」を任された球団社長は、横浜と球団への愛を語り、地域にあるべきスポーツチームの意義を発信することで。そうした一人一人の「あがき」を、本書は余すところなく描き切っている。

読み終えたとき、ベイスターズへの魅力を感じるのはなぜだろう。絶望と諦めが影を落とす中、それでも自分にできることを模索し続けた人々の姿が、胸を打ったからだろうか。  【高橋 翼】