くすぶり続ける火種 慰安婦問題

投稿者: | 2018年1月27日

日本、「おわびと反省」の25年

2月に行われる平昌五輪を前に、日韓両国の関係は悪化の一途をたどっている。

韓国政府は昨年12月、従軍慰安婦をめぐる2015年末の「最終的かつ不可逆的な解決」をうたった日韓合意を検証した。非公開部分も一方的に公表し、「問題は再燃せざるを得ない」とする報告をまとめた。結果を受けて文在寅大統領は「この合意では解決できない」との声明を発表。日本の外務省は「合意の変更は断じて受け入れられない」と韓国政府へ強く反発し、両国の関係には大きな亀裂が生じた。

慰安婦問題をめぐって、日韓両政府は20年以上も攻防を繰り返してきた。

そもそも従軍慰安婦とは、日中戦争や太平洋戦争中に設立された慰安所で、日本軍の兵士へ性的に奉仕した女性のことである。問題は、彼女たちが本人の意思にかかわらず、軍や国によって強制的に従事させられた疑いがあることだった。長らく外交問題として取り沙汰されることはなかったが、1990年代に、元慰安婦の証言や補償請求裁判が相次いだため、日本政府は対応を始めた。

93年、河野洋平内閣官房長官(当時)が強制性を認め、「おわびと反省」を述べた「河野談話」を発表。95年、村山富市首相(当時)は民間による「女性のためのアジア平和国民基金(アジア女性基金)」を設立し、日本国民からの募金で元慰安婦へ「償い金」を支払った。首相からの「おわびの手紙」も添えられた。

ところが民間基金は、韓国世論に「日本政府の責任を認めないもの」とみなされ、問題はくすぶり続ける。2011年にはソウルの日本大使館前に慰安婦像が設置され、13年に就任した朴槿恵大統領も「慰安婦問題の進展がない首脳会談は不可能」という立場を堅持。日韓関係は長らく冷え切ったままだった。

国交正常化50周年を迎えた15年、一転して両国の関係は改善へ向かう。11月に3年半ぶりの首脳会談が実現。同年12月28日、両国の外相が「最終的かつ不可逆的に」慰安婦問題を解決することで歴史的合意を果たした。

文政権は2月の平昌五輪に向けて準備を進めている(提供:ヒョザドン写真館)

 

歴史的合意つかの間

日本は合意に基づき、韓国政府が設立した「和解・癒し財団」に10億円を拠出した。合意時に存命中だった元慰安婦の47人のうち7割を超える36人はすでに現金を受け取っている。

対して韓国では、日本に批判的な文氏が政権を奪取し、財団の運営にあてる予算をすべてカット。理事は相次いで辞意を表明し、財団は存亡の危機にある。また、日本大使館前の慰安婦像を「適切に解決されるように努力する」と約束したにもかかわらず、釜山の総領事館前には像の新設すら許している状況だ。

合意からまる2年の昨年12月27日、韓国は再び慰安婦問題を蒸し返した。文大統領は元慰安婦8名に合意を謝罪。日本に何らかの追加措置を求めるとみられるが、合意を履行した日本に応じる気はない。安倍首相は、韓国から招請されていた平昌五輪への出席を見送る方向との報道もある。

一方で1月、北朝鮮が平昌五輪への参加意思を示したことを機に、南北は急接近中。韓国が宥和的な政策に舵を切れば、北朝鮮にたいして強硬な姿勢を続ける日米韓3か国の連携にくさびを打ち込まれかねない。慰安婦をめぐる対立は、歴史認識の相違という次元を超えて、外交のみならず安全保障にも大きな影響を及ぼす恐れがある。

合意をめぐる文政権の新たな方針は、今月中にも発表される。【銘苅拓也】