〔書評〕モラルなき島 野蛮表出 人間の本性暴く

投稿者: | 2017年11月22日

ノーベル文学賞を受賞した、ウィリアム・ゴールディングの処女作である。イギリス出身の幼い少年たちが、無人島で生き残るために、争いを繰り広げる話だ。最初はお互いに協力していたが、すぐに分裂。「今食べられるイノシシを優先しなければならない」というチーム、と「救助のためののろしを優先しなければならない」チームに分かれた。物語が進むにつれ、イノシシを捕獲するチームが優勢になる。

この小説は、子どもたちの冒険と成長がテーマである小説ではない。大人の統制がない島で、子どもたちのモラルは徐々に崩壊していく。しまいには殺人さえ一つの遊びとなる。

注目は、この悲劇が「登場人物が子供たちだから起きた」とは限定されていないことである。作品中で、物語の舞台は戦争中であることが明示されている。そして、最後に少年たちを島から救出するのも軍人だ。大人たちも、利益のため殺人に手を染める。 結局、どんな人間も心の内側にある「野蛮」から逃れることはできないということを、本書は示している。

作品の中では、人間の理性が作ってきた文明や社会でさえ、道徳が欠如すれば、人間の本能によって一瞬に悪へと変わり果ててしまうことが示されている。 現代に生きる私たちが主体的な思考を追求しなければならない理由について、考察させる作品である。

【兪 和廷】

書籍情報

『Lord of the Flies 』

著者:William Golding

発行:Penguin Books; Reissue edition

出版年:2003年