〔紫風〕第103号 「24時間戦えますか」

投稿者: | 2017年9月27日

「24時間戦えますか」。驚くなかれ。約30年前、栄養ドリンク「リゲイン」に付けられたキャッチコピーだ。企業戦士を讃える歌詞と勇ましいメロディーを添えられ、CMソングとして大ヒット。1989年の流行語にも選ばれた▼当時はバブル景気の絶頂期。歌の中で「ジャパニーズ・ビジネスマン」は、有給休暇や年収アップを励みに、世界中を飛び回る。しまいに商談で外国人を言い負かし、「よく覚えておきたまえ」と高笑いを残して消える。空前の繁栄に沸いた日本経済を象徴するかのようだ▼長引く停滞を抜け出せない今なら、この歌が共感を呼ぶだろう。「はたらけど/はたらけど猶わが生活楽にならざり/ぢつと手を見る」。時代は変わったが、石川啄木がその「手」に込めた思いはなお重い。明治に逆戻りしたこの国の労働観。働き方改革は待ったなしだ▼現在、政府は30年ぶりに労基法の大改正を目指している。労使合意があれば青天井と化した残業時間に、初めて強制力のある上限が設けられる。高度に専門的な仕事には、脱時間給の導入が検討される。だが、国の号令だけで残業削減と経済成長を両立できるのか。疑念は残る▼2014年、時代の変化を反映したのか、「リゲイン」は「24時間戦うのはしんどい」とかつての鎧を脱ぎ捨てた。新しいコピーは「3、4時間戦えますか?」。労働時間の大胆なカットには感服するが、そこまで政府に期待はできない▼今、一人ひとりが労働を考えるとき。どんな未来が待っているのだろう。まだしわのないわが手を見つめる。 【銘苅拓也】