〔紫風〕 第102号

投稿者: | 2017年7月12日

『社会契約論』によって市民社会の成り立ちを説明したルソー。彼は選挙期間のみ、人は本当に自由であると間接民主制に悲観的な視点を向けている。議員が決まるや否や、人民は奴隷になるとまで言い切るのだから驚きだ。選挙が本当に民意を反映できるかを証明することは難しいことを示唆している。

それゆえ、間接民主制には慎重な運営が求められる。その場が立法府である議会だ。これだけの議員がいるのだから、自分たちの考えが「民意」であると決めつけ、数の暴力を見せることを避けねばならない。単純な多数決で物事が決定されるのであれば、民主制の根幹をなす「話し合い」を通じた合意形成は達成できない。それは議会の存在意義を否定するものだ。

「テロ等準備罪」を新設した「改正組織犯罪処罰法」が6月、国会で可決された。揺れる政府答弁、あいまいな規定、不可解な目的など、法案を不安視する声が多いなかでの採決となった。審議時間は約48時間と、特定秘密保護法の約69時間、安全保障関連法案の約216時間と比べると明らかに少ない。もしもスキャンダルへの追及阻止のために、与党が急きょ採決に踏み切ったとするならば、これは数の力で議会を無視したことに他ならない。

自民党は、選挙において経済を争点し、議論を呼ぶ安全保障体制や憲法改正などは表向きにはしない。仮に民意から支持されているとするならば、表立ってそれらを表明すればよい。選挙時に見せる姿と、議会における姿には明確な違いがある。ルソーの言葉が重くのしかかる。

  【高橋 翼】