〔紫風〕第97号

投稿者: | 2016年12月16日

%e7%b4%ab%e9%a2%a853年前のワシントンD.C.で、20万人近い群衆を前に、ある黒人男性がこう問いかける。「私には夢がある」。あまりにも有名なキング牧師の演説だ。「いつか私の4人の子どもが、肌の色ではなく人格で評価される国に住んでほしい——」▼混迷を極めたアメリカ大統領選は、共和党のドナルド・トランプ氏が勝利を収めた。数々の刺激的な発言で、「タブー」とされてきた不満を代弁したことが支持につながった。実業家としての顔を持ち、政治経験がないことが、かえって既存の体制を破壊できると期待されている▼今回のアメリカ大統領選では、国の分断が浮き彫りとなった。「グローバル化」「増え続ける移民」は、戦後アメリカ経済を支えた国内産業を白人労働者から奪い、彼らの「憎悪」の温床となった。トランプ氏は移民への「憎悪」を煽り、実際にボストンでは演説に触発された人によるヒスパニック系住民暴行事件が発生した。白人至上主義を掲げる団体の活動も活発になっている。未だにキング牧師の夢には遠い道のりだということなのだろうか▼この動きは、なにもアメリカに限った話ではない。すでに移民排斥を掲げるヨーロッパ各国の極右政党がトランプ陣営に接触している。トランプ氏勝利は、こうした動きを全世界に拡大させる恐れもある▼表出した「憎悪」。この問題はどのようにうねり、アメリカ社会を混乱におとしめるのか。アメリカの動きに全世界が注目している。「グローバル化」を考える上での重要課題にどう向き合うか、問いかけられている。【高橋 翼】