〔書評〕よしもとばなな著「ハゴロモ」 悲しみを洗い流して 心にしみる大人の童話

投稿者: | 2016年12月16日

%e6%9b%b8%e8%a9%95 誰でも立ち直れないような、ひどい悲しみや経験をしたことがあるだろう。今回はそんな経験をした主人公が、故郷で不思議な人と人の縁に引き寄せられ、新たな青春を見つけるという、心温まる物語を紹介したい。

主人公ほたるは8年続いていた愛人生活を一方的に打ち切られてしまい、悲しみのふちに立たされていた。生活がままならず故郷に帰り、祖母の手伝いをしながら空き倉庫で暮らす日々。空虚な生活を送りながらも、赤いダウンジャケットの青年と出会うことで彼女は次第に自分らしさを取り戻していく。青年は物語の鍵となる人物であり、主人公の心の傷を癒す人物のひとりである。彼は現状を無理に好転させようとせず、そのままの彼女を受け止めてくれる。そんな彼の態度が彼女を安心させた。

この物語では「川」が重要な役割を果たしている。物語では何度も主人公の心の動きや感情が川の比喩として表されている。川は常に流れを止めない。すべてのことを洗い流してくれる。主人公は都会にいた頃の自分、失恋の痛みを洗い流した。本書は自然の情景と主人公の感情がリンクしているのだ。

主人公は失恋の痛みを徐々に癒していったが、失恋に限らず人は悲しむものだ。そんな時は人と人の不思議な縁に助けられることもある。心が寂しい時には、ほっこりとした言葉の魔法に包まれるこの本を読んではみてはいかがだろうか。【西尾柚那】%e3%83%8f%e3%82%b4%e3%83%ad%e3%83%a2%e6%83%85%e5%a0%b1