過労自殺の陰で 電通 騒ぎになる前に対策を

投稿者: | 2016年12月3日

10月7日、東京労働局の三田労働基準監督署が、電通に勤務していた新入女性社員(当時24歳)が自殺したことに対し、過労死認定した。女性は東京大卒で、月100時間の残業という異常な労働実態が明らかになった。本人のものとみられるツイートでは会社でのパワーハラスメントやセクシャルハラスメントに苦悩する姿がつづられており、大きな注目を集めた。

電通は25年前にも、同様の過労自殺事件を起こしている。1991年8月、入社2年目の男性社員(当時24歳)が自宅で自殺した。最高裁は長時間労働とうつ病、そしてうつ病と自殺の関係を認めた。「電通事件」として知られるこの事件は、「過労自殺」という概念が大きくクローズアップされるきっかけの事件と言われている。

一連の事件は遺族の行動によって有名になった。25年前の事件では裁判を起こし、今回の事件では記者発表を行った。何かアクションがあれば報道され、我々は知ることができる。だが、それ以上に「入社間もない新入社員が激務で自殺する」というセンセーショナルな内容によって、多くの人が反応を示し、話題を呼んだ。

このように注目を集める事件がある一方で、実は電通には3年前にも過労死者が出ている。前の2件との違いは彼の死亡時の年齢が30歳だったこと、自殺ではなく病死だったことだ。労基署は長時間労働が原因の過労死と認めているが、大きな記事にはなっていない。一般社員の過労死は、記事になるほどの衝撃はなかった。

我々は煽情的な事件であるほど大きな反応を示し、あれこれ議論する傾向がある。しかし逆を言えば、煽情的事件がないとその問題を考えないということだ。何か起こる前に議論し、対策を立てる必要がある。未然に防がれたことは決して大きな話題になることはないが、それこそが重要なことだろう。感情にとらわれず、問題を冷静に捉えたい。【細田純也】