〔紫風〕第96号

投稿者: | 2016年10月9日

7月29日に公開された「シン・ゴジラ」の興行収入が65億円を超えた。歴代ゴジラシリーズの中でも有数の大ヒットを叩き出している▼『現実(ニッポン) 対 虚構(ゴジラ)』がキャッチコピーの本作は東日本大震災を意識した「災後」作品だ。巨大生物が街を破壊し住民の逃げ惑う場面は津波を想起させ、「想定外」の連続は当時の福島第一原発事故を思い出させる。ゴジラは思考の読めない「災害」の象徴として描かれている 。全てを解決するヒーローは存在しない。法解釈や自衛隊の運用、避難区画の確保や諸外国との連携に悩みながら人々は奔走する。これも5年前のリバイバルなのだろう ▼彼らの姿を己に重ねるとき、私たちはもう震災前に戻ることができないと改めて気付かされる。例え5年前であったとしても、壊された日常は戻ってこない。あの世界の住人と同じように、消えることのない傷や記憶と共に「災後」を生きるしかないのだと。【森元 茜】