「貧困」理解進まず ネット「炎上」批判にひそむ偏見

投稿者: | 2016年10月9日

8月中旬、学生の貧困に関するNHKニュース7の特集で登場した女子高生が、ネット上で「炎上」した。貧困で進学が難しいとする彼女の家には大量のアニメグッズや高価な画材などがあり、とても本当の貧困者には見えない、というのが主な批判だ。国会議員が彼女を批判するツイートを行うに至った。

この女子高生がここまで批判された背景にあるのは、「貧困者はこうあるべき」というステレオタイプだろう。つまり、貧困者は一切の娯楽なく倹約してしかるべき、という考え方だ。しかし家にモノが多いから貧困ではないというのは暴論ではないだろうか。彼女の家にあるアニメグッズにかけた金額の総和よりも進学にかかる学費のほうが高いことは想像がつく。それにもかかわらず「アニメグッズにかけたお金で進学できるだろう」という無責任な批判が多い。

さらに、どうしてもネットの「炎上」はリンチになる傾向がある。もはや貧困とは関係のない容姿に対する暴言をぶつけられた挙句、住所を特定され、匿名掲示板上に掲載される事態にまで発展した。

たしかに彼女はステレオタイプの「貧困学生」代表としては不適切だったのかもしれない。しかし、世間に素顔を晒して貧困を訴えた彼女にこれほど過度な批判や中傷を浴びせることには違和感が残る。騒動から1か月以上が経った今となっては、話題に上ることもほとんどなくなった。相対的貧困の議論よりも彼女が貧困かどうかという議論のほうが盛り上がり、根本的なことはほとんど話されないままに終わってしまった。

ネット上の「炎上」に加担する人は、多くが正義感をもって行動している。「貧困者と偽るのは許せない」といった感情で特定の個人を集中攻撃するが、その正義感は空回りしている。問題の本質はどこにあるのか、一度冷静に考えることが必要だ。   【細田純也】