イギリスEU離脱――シルバー民主主義の危険性

投稿者: | 2016年9月3日

先月24日(現地時間23日)、イギリスは国民投票によってEUからの離脱を決断した。近代民主政治発祥の国が、最も民主的な手段によって国の最重要課題に取り組んだことには強い意義を感じる。一方で、この決断が本当にイギリスをよい方向へと導くものなのか、多くの疑問が呈されている。実際に投票結果が発表されてから、その経済的影響は世界中に及んでおり、イギリス国内でも投票のやり直しを求める声が次々と上がった。なぜ民主的手段を経た決断にもかかわらず、イギリス国民の意に反する結論に達してしまったのだろうか。理由は「ポピュリズム」や「反EU感情」など多く考えられるが、本紙が特に注目したのは、今、先進諸国を悩ませている「シルバー民主主義」の問題である。

イギリスのアシュクロフト元上院議員(保守党)が中心となって実施した聞き取り調査によると、18歳から24歳までの73%、25歳から34歳までの62%が「残留」に投票したのに対し、55歳から64歳までの57%、65歳以上の60%が「離脱」に投票した。つまり、国の生産年齢人口の大部分を占め、これから国を支えなければならない人たちの多くがEU残留を望んでいたが、結果としてはすでに生産の一線を退いた人たちの意見が優先されたのだ。彼らによる民主主義は今、イギリスそのものが分裂する危機をもたらしている。

他方、日本でも同様の問題が生じている。少子高齢化によって高齢者が増加しているので、社会保障という名目で高齢者の生活安定に多額の予算がつぎ込まれている。しかしその財源となる国家収入の半分は借金であり、将来を担う私たちのツケである。しかも高齢有権者は増え続けるので、一票でも多く稼ぎたい国政選挙では誰もこの事態を追及しない。結果として、「シルバー民主主義」は日本でも国家の将来と私たち自身の未来を脅かしている。

今月の参議院議員選挙からついに日本でも、イギリスと同じ18歳選挙権が始まった。若年層が選挙権を得ることで「シルバー民主主義」を解消したいところだが、新たに増えた有権者240万人に対し、高齢有権者の数は3340万人と圧倒的に多い。若者の投票率が低いという問題もある。しかし、私たちは勇気をもって政治に参加し、この現状に異議を突きつける必要がある。これこそ、私たちが理想の未来を目指し、この国を破たんから守る最も有効な手段なのだ。【銘苅拓也】